不法滞在して日本から退去を強制されるべきとされた者(退去強制事由該当者)については、入管収容施設へ全員収用されることになっています(全件収容主義)。
ただし、人道的見地から、帰国困難な被収容者に関しては、収容を解く手段の一つとして「仮放免」制度があるのですが、それが、2015年頃から運用が厳格化してきたことによって、長期収容者が急増しているというのです。

2018年9月23日の朝日新聞デジタルに、次のような記事が掲載されていました。

ビザの有効期限を過ぎても日本にとどまるなどして不法滞在となり、法務省の施設に長期収容される外国人が増えている。母国への強制送還が困難な人がいることや、法務省が施設外での生活を認める「仮放免」の審査を厳しくしたことなどが理由で、今年7月末の時点では収容期間が6カ月以上の人が700人を超えた。収容者の自殺や自殺未遂も起きているが、法務省は抜本的な解決策を見いだせずにいる。

「不法滞在者」と聞くと、法を守っていない悪い人という単純なイメージがあるのではないでしょうか。
それゆえに、仮放免の審査が厳しくなったとしても、国民感情としては、良しとされがちではないのかと思ったりもします。

ただ、仮放免されず、収容者の自殺や自殺未遂も起きていると聞くと、私達の知らない事情というのがあるのではないか?と思うのではないでしょうか?

今年4月にインド人被収容者の自殺があったということについて、次の声明文が触れています。

2018 年 4 月 13 日、東日本入国管理センターにおけるシャワー室で、インド人被収容者 が首にビニールタオルを巻きつけて意識を失っている状態でいるのが発見され、救急搬送 されましたが、約 1 時間後に死亡が確認されました。仮放免が認められなかったことによ り、収容が解かれる見通しのないまま継続することになったことに絶望感を抱いたのでは ないかと推察されます。またこの自死事件の後、16 日から同センターの収容者によりハン ガーストライキが行われました。法務省入国管理局収容施設では、毎年数多くの自傷行為が発生しています(2014 年 59 件、2015 年 51 件、2016 年 30 件) 。また 2013 年から現在まで他に 5 件の死亡事故が起きて います。

自殺が1件あったというだけで、どうこういうことは難しいかと思いますが、自傷行為の多さは、注目に値するのではないでしょうか。

また、入管収容施設への収容は、実質的に無期限の収容を許すものとなっているにもかかわらず、収容決定に裁判所が関与しないという点で、被収容者の人権を著しく制約するものといえるのではないかと思います。

そういう意味で、仮放免制度の運用を見直す必要があるのではないかと思われます。

先程の声明文でも次のような主張がされています。

こうした制度の下、様々な事情で帰国することのできない被収容者が収容を解かれる手 段の一つとして、入管の裁量によって運用されている仮放免がありますが、2015 年頃から 入管は仮放免の許可を厳格化してきました。法務省の統計によると、2017 年の全国の収容 施設における仮放免許可率は、前年に比べ概ね半減しており、結果として、長期収容者の 数が急増しています。2017 年 10 月 23 日現在、入管収容施設に 1 年 6 ヶ月以上収容されている者は 65 名と 2 年前(2015 年 11 月 1 日時点では同 31 名)より倍増しています。また 収容期間が 5 年以上に上る者も出ています。有効な在留資格がないという理由だけで、一 人の人間を閉鎖的な収容所に 5 年間も収容し続けることが認められてよいのでしょうか。

仮放免制度や在留特別許可制度の運用を拡大することを検討すべきではないでしょうか?

今後、国内に在留外国人が増加することは自明なのですから、何等かの対応は急務と言えます。今後の動きに注目していきたいと思います。

申請取次行政書士(immigration lawyer)
若林かずみ(wakabayashi kazumi)
和(yawaragi)行政書士事務所
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