最近は、遺骨を納める場所はお墓だけではなく、海や山などに撒く、いわゆる「散骨」を希望される方も多いということです。
現に、私の友人は、「私が死んだら海に散骨してほしい」と言っています。

1.では、海への「散骨」は、個々人が自由にできるものなのでしょうか?

結論的には…。
散骨については、「墓地埋葬等に関する法律」違反や死体損壊等罪(刑法190条)該当性が問題となりますが、散骨が相当な方法及び場所で行われる場合には、いずれについても問題ないと考えてよいかと思います。
ただし、条例で散骨を禁止している地方公共団体もありますので、散骨する場合には事前に確認する必要があります。
また、国外の領域である海での散骨をする場合には、その国の法律に従うことが必要となります。

2.墓埋法との関係

「墓地埋葬等に関する法律」4条1項では、
「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」
と規定されています。

「埋蔵」とは、「焼骨を土中に葬ること」と考えられますので、
上記法律は、焼骨を土中に葬る(埋蔵)場合は、墓地以外の区域で行ってはいけないと規定していると考えられます。

とすれば、焼骨を海に撒く「散骨」は、直ちに上記法律に抵触しないと考えられます。
(厚生省生活衛生局、平成10年6月発表「これからの墓地等の在り方を考える懇談会報告書」)

これについては、条文には形に上で抵触していないように思われるが、この法律の精神からすれば、やはりこのような行為は予想していないという考え方もあるようです。

そこで、この法の趣旨を考えてみると…。
上記法律の目的は
「墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われること(墓埋法1条)」されています。

国民の宗教的感情は、時代により移り変わるものだと思います。
現代において、海への散骨が国民感情に反するのか?というと…。
反しないと思います。
公衆衛生という観点からすれば、仮に、国民全員が海への散骨をするようになったら…。
実際のところ、意外と大丈夫なのでは?と思ったりもしますが、
程度の問題なのかなあと考えます。
ですので、相当な方法や場所で行われるのであれば、海への散骨も上記の法の趣旨にも反しないと考えます(私見)。

すなわち、散骨の仕方次第では、墓埋法4条に禁止される、墓地以外の区域での「焼骨の埋蔵」に該当する可能性があるので、注意して下さい。
(平成16年10月22日健衛発第1022001号厚生労働省健康局生活衛生課長回答参照)。

3.刑法との関係

死体損壊等罪(刑法190条)の保護法益は、国民一般の宗教的感情、健全な宗教的風俗と考えられています。

また、死体損壊等罪の客体である「遺骨」は、判例によると、
「死者の祭祀又は記念のためにこれを保存し又は保存すべきものであることを必要とし、死者の遺族その他遺骨を処分する権限を有する者が、風俗習慣に従い正当に処分、例えば放擲したものを包含しない」(大宣大10年3月14日刑録27輯165頁)とされています。

とすれば、海への散骨については、相当な方法及び場所で行われる場合には、
死体損壊等罪を構成しないと考えられるでしょう。

4.終わりに

以上から、海への散骨については、それが相当な方法及び場所で行われる場合については、法律によって禁止されるものではないと思います。

ただ、最初にも申し上げましたが、条例で散骨を禁止している地方公共団体もありますので、実際に散骨をされる場合には、散骨場所を管轄する地方公共団体に事前に確認しておきましょう。
(条例で散骨を禁止している地方公共団体は、例えば、埼玉県秩父市、北海道長沼町、東京都福祉保健局など…。)

《参考文献》
「お墓にまつわる法律実務」NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク編著(日本加除出版株式会社)
「お墓のことを考えたらこの一冊」弁護士石原豊昭著(自由国民社)

和(やわらぎ)行政書士事務所
特定行政書士・申請取次行政書士・AFP・法務博士
若林 かずみ
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